日置電機 ハイテスター 3000 電池電圧測定レンジの振れを0.1V小さくする修理
HIOKIのアナログテスター 3030-01 (内蔵されていた乾電池KING POWER-Uの製造年月から推察すると1981年製) YAで手に入れたんだけど、1.5Vの電池をDC3Vレンジで測定すると1.62V これを電池電圧測定レンジで10Ω負荷抵抗につなぐと、電圧降下すのでるで本来は1.5V ぐらいにならないといけないのであるが、1.6V以上針が振れる。 NiMH電池を測定してみるとDC3Vレンジだと1.43Vなのに、電池電圧測定レンジだと、開 放端電圧よりも高い1.5Vぐらいを指示する。 今回は内部の分圧抵抗を調整して、正しい端子電圧を指示するように修理しようと言うも のである。 |
日置電機 ハイテスター 3000の電池電圧測定レンジの振れを少なめにする改造 2010.4.3
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日置電機 ハイテスター MODEL 3000
YAで710円で入手
本体は特に壊れてなくて正常なのであるが、1.5V電池をDC3Vレンジで測定した電圧よりも、電池テストレンジで測定した値のほうが大きい値になるので、どうもおかしい。 調査したところ、どうも設計ミスであると判断した。 現行モデルの3030-10も持っているのであるが、こちらはちゃんとした値を指示するので、3000のほうもなんとか正しい値を表示できないかと思い、3000の取説の回路図と、よく似た時代の3021の回路図を参考に、改造に取り掛かった。 | |
裏ブタを開けるたところ。 電池電圧測定レンジは、10Ωの負荷が接続され、青いリード線が半田付けされている抵抗24.3kΩが分圧抵抗となりフルスケールで1.8Vの電圧計として働くようになっている。 しかし、どうも実際にはフルスケールで1.7Vである。つまり実際の端子電圧よりも0.1V大きな値を指示するのである。 | |
これは、HIOKIのキットハイテスター3021の回路図である。細部で異なるが3000も同様な回路であった。
電池電圧測定レンジでは、30mAレンジ用の分流器10Ωが負荷抵抗となり、24.3kΩの分圧器、メータ直列抵抗4.93kΩ(3000は4.79kΩ)を通じてメータコイルを駆動する。メータ回路電流は50μAなので、単純に計算すると、20kΩ/Vならフルスケール1.515Vとなるはずであるが、 実際には1.7Vである。 これは、ヒューズの内部抵抗を考慮していないからであり、500mAのヒューズは内部抵抗が約0.7〜0.8Ωある。これを考慮すると、1.7Vはほぼ計算どおり。 現状で1.5Vの目盛は、実際には1.4Vということになる。 | |
24.3kΩ抵抗拡大 これを何Ωに取り替えたらよいか、カットアンドトライでやってみるのもよいが、指示が0.1V小さい値になれば気はおさまるので、ここは単純に2kΩ大きな値とすべく抵抗を選定する。(0.1V÷50μAで求めると、2kΩになる) 24.3kΩ+2kΩ=26.3kΩがたぶんよさそうであるが、そんな抵抗はE96系列、E192系列にもない。ここはE24系列の27kΩでがまんする。 KOAの1/4W金属被膜抵抗27kΩ(MF1/4CC2702F)マルツ電波で21円で入手できるのでそれにした。 ここで青リードは24.3kΩ抵抗から外しておく。 | |
テストリー用端子金具の半田を吸って、3箇所のラッチを外しながら基板を引き抜く。
ロータリースイッチのパターンの中に取替える抵抗のランドがある。 抵抗の足は曲げてあるので、そのまま足を起こしながら半田を外すことは困難で、大事なパターンを傷めるおそれがある。 | |
ここは、24.3kΩ抵抗の足を部品面でニッパで切断してから、半田面の曲がった足を半田こてを当てつつ、ピンセットでひろうことが賢明である。 | |
27kΩに取替え完了。 | |
青リードを元に戻して半田付け | |
27kΩ拡大 金属被膜抵抗はカラーコード5帯で表示される。 | |
分解したついでに、取説pdfでは読みにくかった抵抗値を記入しておいた。 | |
少しくたびれたアルカリ電池 3Vレンジでは1.32V 3000の指示もほぼ合致 比較基準器として使っている三和電気計器のFD-750Cは古いテスターではあるが、確度は±0.08%rdg+0.03%レンジであり手持ちのテスターの中ではいちばん精度がよいものである。 | |
少しくたびれたアルカリ電池 電池電圧測定レンジでだと1.16Vになる。 この校正点の目盛もほぼ合致している。 | |
ほぼ新品のアルカリ電池 3Vレンジでは1.62V 3000の指示もほぼ合致 | |
ほぼ新品のアルカリ電池 電池電圧測定レンジでだと1.58Vになる こっちの校正点の目盛もほぼ合致。 27kΩに取り替えて満足のいく指示値になりました。 めでたしめでたし。 でも後から考えてみたんだが、ひょっとしたら設計ミスではなくて、単に使用しているヒューズが適切でなかっただけなのかも。 3000は時代ごとに使用ヒューズが異なるが0.3Aの時代もあるし、0.5Aの時代もある。この3000はひょっとしたら0.3Aが正規の値だったかもしれない。0.3Aヒューズの内部抵抗がいかほどなのか手元に0.3Aヒューズがないので計算できないが、0.3Aに取り替えれば24.3kΩのまま正しい値だったかもしれない。 まあいいや。ぼくの3000は抵抗もちぎっちゃったので元に戻せないし、300mAレンジがあるのに0.3Aのヒューズが適切かどうかも考えると、また頭が痛くなるし、最近のモデルでは300mAレンジなら0.5Aヒューズがついているので、0.5Aで行こう。入手性もよいし。 | |
日置電機に聞いたところ、3000は1981年の発売当初は0.3Aのノーマルヒューズを使用していたが、1983年のマイナーチェンジで0.5Aの消弧材入りヒューズに変更したとのこと。 内部抵抗は0.3Aノーマルヒューズ、0.5A消弧材入りヒューズともにほぼ同等(約1.8Ω)であり変更したとのこと。 なーんだ。そういうことだったのか。0.5A消弧材入りヒューズを使えばよかったのか。あーあ失敗したな。 たしかに、3030-10の0.5Aヒューズの内部抵抗を測定すると、1.6Ωぐらいある。もっと早く気づけばよかったが。私の3000は0.5Aノーマルヒューズ仕様ということにしておこう。 |
ほかのHIOKIのハイテスターでも電池電圧の指示を確認してみよう。 2010.4.6
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YA病にかかって入手した2つの3030-10 左は2009年モデル新品で、右はそれより前のモデル中期・旧型です。 3000は抵抗レンジがx1、x10、kΩの3つであるが、3030-10はx100が追加されている。 抵抗レンジの目盛の中央値が30Ωになっている。(3000は20Ω) その他はほぼ同様に使えるが、入力電圧はカテゴリVの600Vに落とされている。 | |
2つの3030-10はプローブが異なるのみで本体は同じかと思っていたが、中身は違ってました。 2009年モデルは、CEM3基板でトラッキングショートに強そうだし、基板の部品はSMT部品になっている。旧モデルはリードスルー部品、紙エポ基板なので、高圧測定ではトラッキングショートが心配。これらのモデルはロータリースイッチ部も高圧対策が採られており、内周と外周の離隔も広く設計されており(ロータリースイッチの外径が大きい)、よほどのことが無い限りトラッキングショートすることは無いと思うが。 |
こちらは古いほうの3030-10 |
日置電機 ハイテスター MODEL 3030-10 YAで2100円で入手 2007年よりも前のモデル。 3Vレンジの振れが小さい。 | |
同様に電池電圧測定レンジでの振れも小さい。 こっちの計器は精度が悪そうだ。 | |
DC3Vレンジの内部抵抗を測定 設計上は60kΩでないといけないが、61.4kΩある。 1.4/60=2.3% つまり 2.3%低い値を指示する。 このレンジのみが確度が悪いわけではなく、他のレンジも振れが小さいのである。 内部抵抗を測定しているDMMはHIOKIの3256(1997年製) 3256の抵抗レンジ 確度は0.5%+4dgt | |
分解してみよう。 構造を確認したところ、ロータリースイッチの載っている基板のみ外れるようだ。 | |
基板の分圧抵抗、分流抵抗 振れが小さい原因は、ここに使われている分圧抵抗の値が表示よりも大きいからだ。 この時代に作られたHIOKIのテスターは本当にpoorな品質の抵抗を使っている。 カタログスペックである確度2.5%には入っているが、とてもHIOKIの品質とは思えない。 中古で買うなら、この9207テストリードの3030-10は避けたほうがよい。 |
こちらは最新といっても2009年モデルの3030-11 |
日置電機 ハイテスター MODEL 3030-11ブリスターパックモデル(3030-10の販売パッケージ違いで3030-10となんら変わらない) YAで3780円で入手 2009年製新品 3Vレンジの振れはまあまあ合っている。 | |
3030-11の電池電圧測定レンジ 針1つぶん振れが小さい程度。 | |
DC3Vレンジの内部抵抗測定 設計どおりの60kΩ 20kΩ/Vぴったし。ほかのレンジもほぼ設計どおりの値であった。 | |
2009年モデルのシリアル番号は、メータパネルではなく裏蓋についている。 | |
新品なので分解をためらったが、中期モデルで予習したので簡単に分解できた。 SMT部品を採用 分圧抵抗は、数個の抵抗の組み合わせで値をつめており、その結果確度が良い。 良い設計をしているな。 基板をもう少し拡大 |
3030-01の初期モデルを友人が持っていたので、研究のために写真を取らせてもらった。 2010.4.11 |
日置電機 ハイテスター MODEL 3030-01ケース付 年式は不明 | |
テストリードの赤棒は太くて、ヒューズ内蔵なのだ。 品番9153ヒューズ付テストリード | |
裏ブタと基板 ヒューズは0.5A消弧材入りである。内部抵抗約1.8Ω | |
手持ちのガラス管ヒューズ内部抵抗一覧 富士端子FUJI FGBO 250V0.5A 2.83Ω 富士端子FUJI FGBO 250V0.3A 8.64Ω KSG FGBO 0.5A 0.70Ω OKA FGBO 0.5A 0.81Ω 富士端子FUJI FGMB 125V1A 0.12Ω FGMB 250V0.5A 0.48Ω |
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