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ダイニチ 石油ファンヒータ FW-5590L 分解・清掃


先日退職されたの大先輩のおばさんから連絡があり、近所に住む知人が ファンヒーターを買い換えたので、古いやつを捨てるんだけどあんた 欲しなーいーと言うので、2つ返事でクレクレタコラ。
             2011.1.8                           
見たところまだ新しそう。2004年製。
大きいなあ 能力は5.5kW。
今はちゃんと点 くんだけど、点かない場合があるんだわー。
エラーメッセージE02なので、油フィルターや油受皿内に水やゴミがたまったので 自動消化したと書いてあるので、油受皿等の灯油のごみとか掃除したけどダメなときは ダメなんだわね。

という症状報告だったが、よい研究材料なのでもらってきた。

しかし家では全く症状が出ませんでした。
これはシメシメと清掃に取り掛かる。
参考にしたWEBはこちら
FW-5590L 5.5kW 2004年製造
フロントパネルを外すとこの有り様。案の定わた埃が多い。
写真は取り忘れたが、後ろ側の燃焼・温風空気取り入れ口フィルターや FANも埃でびっしり、そっちは先に外して掃除中。
キッチンで使っていたようで ケースも天ぷら油とかでベトついていた。
しかし燃焼室は思ったほどベトベトでは なかった。
ダイニチは、気化器に流入する灯油を高温に加熱して気化ガスとし、この気化ガス をノズルからバーナに噴出供給して燃焼させる方式。これをブンゼン式というらしい。
割りと簡単にここまで分解できたので、バーナーのところも見ることができた。
点火ヒーターや、炎を検知するフレームロッドも特に劣化していないようだ。

その日は清掃後元に戻してしばらく使っていたが
バーナー部拡大
前の持ち主の言う症状が出た。1発目の着火は失敗しないのだが、一旦消して ファンヒーターを別の場所へ移動して、再点火しようとすると、点火ヒータ は赤くなるのだが、どうも燃料を噴射していない。10分間待てば、普通に着 火する。

再点火でNGの音
隠コマンドに興味のある方へ
タイマーボタンを押しながら温度+ボタンを5回押すと展示品デモモードになる そうYOUTUBEに紹介されていた。
燃料を噴射していないことから。基板をまず点検してみる。
基板の半田を見ると、なにやらリレーRL2をさわった形跡があった。 パターンを追っていくと、このリレーは気化器のプランジャーを 吸引するソレノイドの制御の一つ。これが悪くて過去に修理した ことがあったのかな? 前の持ち主はそんな修理履歴はあったとは 言ってなかったが、ちょうどいいリレーがそこら辺に落ちていたので 拾ってきて、それに交換してみよう。。
予防処置を含め、RL1、RL2、RL3を交換してみたが、現象は特に変わらなかった。 念のため外したリレーの耐久試験を行ったが、10000回以上動作させたが 異常なしだった。ALD124はALDP124WやOMRON G5NB-1Aと足が同じで代替できる リレーが多い。Tyco ElectronicsでいうならばPCJ-124D3M,301が使える。 どうやら、リレーの接点不良等ではなかった。下手な半田修正に惑わされた。 そういえば、リレーのほかにも手半田修正してある部品があったなあ。 単に半田槽でのはんだ不良を、製造ラインで修正しただけのようであった。
ならばということで機械部分の点検に入る。

燃料ポンプはちゃんと駆動しているようだし、取説にあるように燃料ポンプ のフィルター詰まりかなー。

外してみる。
フィルターはきれいであり、問題なさそう。
じゃあ気化器かなあと外してみる。気化器のプランジャーを駆動するための 電磁コイルの断線もなさそうだし、詰まりでもあるのかなあ? 気化器の先っぽにちんぼが生えていて、ソレノイドが働くことにより内部のプ ランジャーを引きちんぼ(ノズル)が引っ込んで、そこから霧(ではなく気 化した灯油)が出るしくみなんだが、消火するとそのちんぼが頭を出して、 燃料ラインをカットする。
気化器の先っぽのノズル。 ここに少しカスがついてはいるが、よーわからん。ノズルをツメで押すと引っ 込むことは引っ込むが動きが渋いような気もする。エアーガンで掃除したけ ど詰まっている様子はない。そりあそうだ。一発目はちゃんと着火するもん なあ。 ノズルのある噴出口、未確認ではあるがねじ式になっていて、くるくる回すと 外れたのかもしれないが、回して傷がつくといやなので、さわらなかった。 元に戻してみたが、症状は出たり出なかったり。たぶん熱膨張と関係があり そうな気がする。冷間時はよいが、温間時にプランジャーを引けないのでは なかろうか。結論としてはよくわからずじまい。そのまま元に戻す。 再点火NGのとき、気化器のニゲパイプの銅管やフレアナットを指でさわると やけどする。それぐらい熱い。ここを圧搾エアーで冷ましてやるとうまく点 火する。
エラーE02の故障診断フローチャート
その他のエラーはこちらに一覧あり
まあ一発目にちゃんと点火すれば、何とか使えそうなのでそのまま使うこと にした。
しかし5.5kWのファンヒーターはすごい火力だね。すぐに暖かくなる。寒い キッチンだとこれくらい大きな能力のファンヒーターが必要だということが よくわかった。
それにしてもダイニチは鉄板がペラペラだねえ。手をついたら天板は簡単に へこみそうだよ。

その後数回は症状が出たが、使っているうちに症状が再現しなくなった。

FW-5590L再点火の時の音 500kB 2分間
ガンという音は、気化器のソレノイドがプランジャーを吸引しノズルが開 く時の音。

シューシューがバーナーの音、 脈動(気化ガス噴出量が周期的に変動する) がわかるかな。ダイニチのファンヒーターは脈動が気になる。

再点火後、設定温度を20℃→24℃→20℃に戻すバーナーの音
別のコンデンサーマイクロホン(アルパインのカーナビのマイク)に取り替 えて録音したので、ちょっと音質が違うかも。

先に録音したやつは、市販のコンデンサーマイク素子を箱に入れた自作のマ イクです。

構造はいっしょだが、素子とパスコンの値が異なるので、同じ音ではない。 それにしてもパソコン用の付属のスタンドマイクは使い物にならないねえー。 ブーブーhum音は重畳するし、ファインヒーターに近づけると、ブンブン言う。

コールドスタート時の音 8℃ 1.5分間             
いろいろ故障箇所を診断していて、ファンヒーターのおおまかな燃焼制御方法 がわかってきた。

燃料ノズルの電磁コイルは、引きこむときはDC90Vをかけて、プランジャーを 思いっきり引いて、その後の保持はDC20V程度に落として保持している。

燃焼パワーの大小は、燃料ポンプのソレノイドの周期を可変して、送り込み量 を制御している感じ。

こういうことは、修理してはじめてわかることだね。

わからんことは、 特許電子図書館 - 特許 ・実用新案検索

公報テキスト検索で公開特許公報を見るといろいろ勉強になるよ。

3.公報テキスト検索でキーワードを入力して文献を検索すると良い             
追加の研究   気化器分解してみる。    2011.3.20             
気化器は本当に分解できないのかと、ソレノイドを外して製造の工程を予想して分解してみる。

ニゲパイプ用のユニオンはどうも回転させると取れるような気がしたので、くるくる 回したが、回転するだけで手前にゆるんでこない。

しかし少し手前に来たような感じだったので、ぐりぐりやりながら引っぱったら、抜けてしまって内部のばねとプランジャーが飛んでいってしまい大慌て。

すぐに回収。

無くなった部品はないと思われる。
つつっぽの中はこうなっていたが、どうも構造を理解できない。

ダイニチの気化器のニードル=針弁(バルブロッド)は、プランジャーと一体ではない。

この状態でニードルは引っ込むが、他に部品は外れてこない。

ここまでばらしておきながら、筒内に見えた鉄色のカラーが可動片だと気付かず元に戻してしまった。だって細いドライバーで手前に引きずっても抜けてこなかったんだもん。

そのあとで公開特許公報 特許出願公開番号-特開2006-234189に行きついたのであるが、見る順番が逆であった。
特許を先に探し、そのあとで分解すべきであった。思い込みやあてずっぽはダメだ。

マグネットピックアップツールを使っていれば、可動片が手前に出てきて分解終了となるはずであった。

詳しく調べたいのであれば、idplのwebで特許公報テキスト検索で、気化装置、ダイニチ工業をキーワードで調べるといいよ。
気化器の図
また、ノズル部は分解の前に外そうとしたが、やっぱり無理であった。

コレットチャックで上手に掴まないと、真ちゅうはへこむだろうし 分解できず。 

ノズルパイプと噴出口は一体であり分離できません。
ノズルパイプと噴出口は一体であり分離できません。
そのまま元に戻し、テスト。
火炎はよさそうなつぶつぶなんだが
一旦消化して、すぐに再点火するとやっぱり同じ症状。

何回やっても同じであるが、一旦長時間火をたいてやると、 再点火でE02エラーは出なくなる。なんでだろうね。
メカニズム的に考えると、ソレノイドが働き、プランジャーを引いても ニードルが一体でないので、強制的にノズルを開くことができないこと まではわかったが、どこかに引っかかっている。

連動しているバネが滑 って引き抜くことができないことがあるのではと思うが、それ以上わからず。

?? 真鍮は電磁石で引けないので、引かれているのは上記のばねとプランジャー 部分ではなく、内部の鉄のカラーか?もうちょっと慎重に分解できるかどうか 見なくてはいけなかったかな。まいっか。  


追加の研究 補習授業2時限目

まいっかではなく、とこんやる。気化器の構造がわかったので、可動片とバルブロッドをはずしてみる。
       2011.3.26             
気化器だけ外す。

以下のコネクタは抜いておく。
ヒーター、
気化器サーミスタ、
気化器ソレノイド

送油パイプを電磁ポンプ出口でフレアナットを緩めて切り離し、ニゲパイプもフレアナットを緩めて外しておく。

気化器取り付けM4バインド小ねじを2本外し、気化器のニゲパイプ側を上方へ5mmぐらい持ち上げ、ごそごそやって気化器だけ外す。
気化器のニゲパイプを接続するところ、ここが固定片である。

これの二面幅部をつまんで、ぐりぐり回転させながら引っぱると、ストローク5mmでOリングが見える。

勢いにまかせて引き抜かないこと。中の部品が飛び散る。

こういう嵌合物は、端部から4〜5mmのところにOリングが嵌っているものと思って作業すること。

左の写真は前回とおなじものです。
内部の可動片を引き抜くために、マグネットピックアップツールφ11(1.5kgf)を使って、可動片に磁石をくっつけて引くが、磁力が弱く途中で離れちゃう。

でもごそごそ往復運動を繰り返していたら、徐々に出口に近づいてくる。ようやく抜けた。
よくある気化器の図
可動片を引っぱるのに使ったマグネットピックアップ
秘密基地から一時的に借用

アストロプロダクツで同様のものが、390円 APマグネットピックアップバーM
ストレートだと、ピックアップツール強力マグネットタイプ19-231235が520円で販売されている。
二ードル一体バルブロッドφ3部にはスラッジがびっしり。

これが原因でソレノイドで可動片をひきつけようとしても、ロッドがノズルパイプ内面に引っかかり、ウーンとソレノイドが唸り
その結果針弁が開かず、熱い気化ガスはニゲパイプ側にもどり、着火しないということだ。

ニゲパイプが熱くなるのはこういうメカニズムである。

冷間時はうまく動くが、再点火でソレノイドがウーンと唸るのは、バルブロッドのスラッジによる引っ掛かりが原因である。
筒体の大径部の内径は13.43mm

マグネットピックアップを買うのであれば、これよりも直径が小さいやつが必要だ。
ステンレス板の端材のエッジでこりこりやり、そのあとスコッチ・ブライト不織布表面処理剤工業用パッド8448で磨いてスラッジを落としました。

バルブロッドの材質は真鍮ではなく鉄であった。

Eリングを外せば、バルブロッドが固定片から外れるはず。

元通り組み直します。
※ニゲパイプを接続する固定片の位相は現物合わせでうまく合わせること。
結果は見事直りました。消化後の再点火でもミスしません。よかったよかった。

手がけてから、修理完了するまでに2ヶ月以上もかかってようやく直った。 この不具合現象の原因は、ポリタンク入りの灯油。都会の人は、ポリタンクで灯油を買ってくる。18L買っても、9L給油すると残りがある。なので保存中にポリが灯油に溶ける。その成分が燃焼するとこうなる。田舎の人は、200Lのホームタンクがある。そこから直接燃料タンクに給油するので、ポリタンクは使わない。ポリ使わなければ故障はしない。

今日は2024年3月24日、あれから13年経過しているが、調子よく使えている。  

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